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閑窓vol.7 遥空を仰いで
¥800
閑窓vol.7 「遥空を仰いで」 運河の先にある架空の空港、瑞枝空港をめぐる短編集です。全8編収録。 [執筆者] 芥川心之介 化野夕陽 板垣真任 衿さやか 熾野 優 瀬戸千歳 丸屋トンボ 中川マルカ 杞憂を掬う/熾野優 集合場所に指定されている時計台にいたのは、一度も話したことがない副担任の佐々木だった。 お迎え/芥川心之介 迷いのない無邪気なステップ。白銀の光を照り返す六角柱のチャームが、少女の首元で揺れる。例えば上空から大荒れの海に何かの果物でも落としてやれば、海面でちょうど同じような揺れ方をするかもしれない。通路のど真ん中で、男はぼんやりと空想する。魚は果物を食べるのだろうか。硬い海水で味付けされた、甘じょっぱい果物を。 バスツアー/丸屋トンボ 会社の労使共済イベントは、瑞枝空港の立ち入り禁止エリアを回るバスツアーを選んだ。野球観戦のグループという選択肢もあったのだけど、僕は野球に興味がないし、なにより仲がいいわけでもない会社の先輩や同僚と息を合わせて、ホームランだのセーフだのアウトだのというタイミングで同じように歓声を上げなければいけないかと思うとぞっとした。 孤独の封緘/瀬戸千歳 いま瑞枝に帰る機内でこの手紙を書いています。遥斗が旅先からポストカードを送ってたことを思い出して、おれもやってみたくなった。遥斗は自分宛に出してたな。帰ったあと旅先から届くのがおもろいんだって。延長線。旅行の延長線って呼んでた。だからおれもそうしようかと思ったけど、たぶん恥ずかしくて読み返さない気がするし、この手紙は遥斗に、いちいち漢字で書くのは画数多くてめんどうだしカタカナでもいいか? ハルト。気にしなさそうだもんな。カタカナにする。この手紙はハルトに向けて残すことにします。 ...and more!! 写真:ヒロセミサキ イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2024.12.1 初刷り A6版/174ページ/カバーあり/帯付き
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閑窓vol.5.1 道辻の(ささやかな)灯り
¥300
閑窓vol.5「道辻を灯す」の舞台だった架空の商店街、祝坐町商店街に新たなお店が新しく4店舗加わりました。全4篇収録。 梅の季節/丸屋トンボ 長年連れ添った妻に先立たれた夫は、一年も経つと呆けるそうだ。医者は娘の心構えのためにと親切心から伝えたのだろうが、傍聞きした夫の三木夫にとっては気分が悪い。今年で米寿を迎えても、なぜか耳は遠くならなっていない。 付憑/瀬戸千歳 カガノさんは風呂がきらいなので、ひとりになりたいときは銭湯へいくことにしている。蒸気のなかにいては境目がますます曖昧になってしまうらしい。それじゃあ銭湯は霊とかいないんですかと、いつだったか尋ねたことがある。そういうんに頓着せんアホみたいなんがおる。 名もなき骨/熾野優 このバス停は車庫の次の停留所にあたるため、毎朝バスの到着が遅れることは決してない。いつも同じ時刻のバスに乗るので並ぶ人たちの顔ぶれも覚えていて、眼鏡をかけた長身だが猫背のサラリーマン、オフィスカジュアルといった服装の茶髪の女性、そしてこうやってバスを待つ間にようやく目が覚めてくる私が続く。 顔燕(ツサカ)/Yoh クモハ 黒い翼が初夏の空気をバターナイフのように切り取っている。商店街をツサカが飛ぶようになると汗ばむ季節だ。ツサカは軒先に巣を作る鳥だ。縁起のいい鳥だと言われているが、フンも落ちるし、食べ物屋には歓迎されない。 挿 画:橋本ライドン デザイン:瀬戸千歳 写真:ヒロセミサキ 口絵:椎木彩子 イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2024.5.18 初刷発行 B6版/28ページ/中綴じ本
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閑窓vol.6 常しなえの佳日
¥700
閑窓vol.6 「常しなえの佳日」 架空の百貨店、八満屋をめぐる短編集です。全8編収録。 [執筆者] ・伊藤美希 ・大滝のぐれ ・熾野 優 ・瀬戸千歳 ・鳥山まこと ・旗原理沙子 ・丸屋トンボ ・望月柚花 道の真ん中でひとり/熾野優 母と違って目が悪い私は星のひとつひとつが鮮明には見えない。ぼんやりと、小さく強く輝く光の粒がちりばめられている。 細蟹姫/瀬戸千歳 ウワサによればこのフロアにあるらしい笹は、七夕がすぎて撤去されるまで毎日短冊をかけ続けたら願いが叶うというもの、けれど婦人服のフロアにあるからおれら男子中学生がおいそれ立ち寄れるわけでもなし、実際のところクラスの男子で目にしたやつはいないみたいや。前に住んでたところでもそういう願かけは流行ったから「それお百度さんやん」なんて思わず口にするけどもちろん誰にも伝わらず、それってどんなやつなの、など聞き返され、それだけならまだしも、どんなんどんなんおしえてえなあなどへったくそな訛りを使われてむかついたし、おれも使わんように話してみるけどぜんぜんむりで、ていうか標準語をしゃべるおれサブイボが立つわ。 大理石に泳ぐ/丸屋トンボ 海の底の夢を見た。ほかのアンモナイトたちと珊瑚の森を泳ぐ。三葉虫が群れを成して行進する。頭上で巨大なシーラカンスが方向転換し、わだつみが渦を巻く。海の底なのに、なぜか遠くの山々にはしんしんと雪が降っている。アンモナイトだって夢を見るのだ。 ...and more!! 写真:ヒロセミサキ イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2023.5.20 初刷り A6版/190ページ/カバーなし/帯付き
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閑窓vol.5 道辻を灯す
¥700
閑窓vol.5 「道辻を灯す」 架空の商店街、祝坐町商店街をめぐる短編集です。全8編収録。 執筆者 ・大木芙沙子 ・熾野 優 ・北木 鉄 ・桜田一門 ・瀬戸千歳 ・松尾 晴 ・丸屋トンボ ・宮月 中 なめらかでつるりとした/瀬戸千歳 やっぱり手がいい、指がことさらにいいと千崎さんからしきりに褒められ、その流れのまま水晶玉を磨くバイトにスカウトされた。八月、サウナでのことである。はじめは、もちろん断った。が、千崎さんもなかなか折れなかった。 今夜全てのゲイバーで/丸屋トンボ この店のお客さんは雨が苦手だ。金曜日の22時。店をオープンして2時間も経つのに今日はまだお客さんが来ていない。さっきまで頑張って営業をかけていたが反応が悪い。タクちゃんにシュウちゃんにウラタさん。いつも金曜日に飲みに来てくれるお客さんにで知っているひとは大体連絡したのだが、仕事が終わらないとか、会社の飲み会だからとか言われて、体よく断られてしまった。初めて一人で店に立つのだから、誰か来てくれるだろうと思っていた当てが外れた。 小規模な悪/熾野優 他人の幸せを心の底から祝うためには、まず自分自身が幸せでなければならない。手にした抽選券で誰がガラガラを回すかを決めかねている家族を見ながら、私はそう思った。 ふくらはぎ/大木芙沙子 あや子が母の姿について、思いだすのはふくらはぎ。店先や、浴室や、台所に立つ母の、ナイロン製のひざ丈スカートから伸びた脚。むきだしの皮膚にはよく見ると剃り残った体毛がちくちくと生えていて、しかしそんなことではすこしもその威厳を失わないような、立派なふくらはぎだった。 ...and more!! 写真:ヒロセミサキ 口絵:椎木彩子 イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2022.5.28 初刷発行 2023.5.21 2刷発行 A6版/164ページ/カバーなし ※帯は付属しません
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閑窓vol.4 学窓の君へ
¥700
SOLD OUT
閑窓vol.4 「学窓の君へ」 坂の上に建つ架空の学校、枝浜南高等学校・付属中学を舞台にした短編集です。全10編収録。 執筆者 ・オカワダアキナ ・熾野優 ・貝塚円花 ・篠田恵 ・瀬戸千歳 ・丸屋トンボ ・山本貫太 ・由々平秕 ・游泳準備室/オカワダアキナ ある朝起きたらおれはここにいた。前世のことはあんまり思い出せないが、おれは二周目の人生を送っているとわかった。 誰かが教えてくれたわけじゃない。ただわかった。自分がそうだと気づいていないやつ、気づかないままのやつもいるだろう。でもおれは理解した。 ・ザリガニを春に釣るということ/瀬戸千歳 ギャルはギャルを呼ぶ。国語の教科書が配られたらまっさきに小説を読むような、真逆の私がギャルに引き寄せられるはずないんだけど、どうして、佐伯と一緒にザリガニを釣りにいってるんだ? ・犬騒動/熾野優 犬だ、と窓際の誰かが叫んだ。ただでさえ眠い理科の授業なのに、水泳の後という万全の状態でまどろんでいたから、私はその声を誰が発したのか瞬時にはわからなかった。 ・暗い結晶/丸屋トンボ スコップを右肩に担ぎ、左手に兎のケンが収まる小さな棺桶が入った紙袋を提げて、私は高校へ続く夜の坂道を登る。 ...and more!! モデル:波多野伶奈 写真:ヒロセミサキ イラスト:橋本ライドン 装幀:瀬戸千歳 閑窓社 2021.5.16 発刷発行 閑窓社 2022.5.29 2刷発行 A6版/194ページ/カバーなし
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閑窓vol.3 閑日月に捧ぐ
¥700
SOLD OUT
閑窓vol.3 「閑日月に捧ぐ」 架空の路線の始発駅から終点をテーマにした短編集です。13篇を収録。 執筆者 ・熾野優 ・染よだか ・鮭とば子 ・瀬戸千歳 ・園田亜真理 ・幅観月 ・丸屋トンボ ・杜崎ひらく かつての帰路(羽沼駅)/熾野優 引っ越し先で歯医者を探すのが億劫になり、かつて過ごした街へと私は帰ってくる。様変わりした駅、昔はなかった進学塾、なにひとつ変わらない公園……。断片的な記憶が現れては消えるなかで、私という人間を見つめ直してゆく。 通夜の晩(音羽駅)/丸屋トンボ 「通夜の晩だぞ。息子に何か話しておくことないのかよ」 祖父の葬儀のため、宿泊施設で父と並んで床に就く悟。眠りかけた父の口から語られたのは、父が子どもの頃にやった悪さだった。 ひるがえる金色 前編(祝座町駅)/瀬戸千歳 「七緒の父親はいまも水族館でイルカの飼育員をしている」 酔っ払った母親からはじめて不在の父親について話され、僕は興味半分でめっぽう当たると噂の占い師に訊いてみることにする。16の夏だった。 姉、呪いの壺(用坂駅)/鮭とば子 最悪だった。大学二年生の夏なんてサークル活動でも、課題でも、恋愛でも、とにかくいくらでもなんでもできるはずのある日。私は六つ上の姉と名もなき山にて、ぜえぜえと息を切らしながら、大人の腰ほどある大きな壺をふたりで底から持ち上げ、運んでいた。 ...and more!! 装幀 瀬戸千歳 写真 ヒロセミサキ イラスト 橋本ライドン 閑窓社 2020.10.17 初版1刷発行 A6版/166ページ/カバーなし
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閑窓vol.2 旅の丸寝
¥700
SOLD OUT
閑窓vol.2 「旅の丸寝」 川のそばに建つ架空の旅館「柳水庵」を舞台にした短編集です。8編を収録。 執筆者 ・池野哉 ・市ヶ谷 ・熾野優 ・鮭とば子 ・瀬戸千歳 ・橘つばさ ・丸屋トンボ ・本山毱子 たまらなく君に傷ついてほしかった/市ヶ谷 「元彼にシュークリーム投げつけたいから箱根行かない?」 火鍋を食べにいくはずだったのに、なんで私はロマンスカーに乗ってるんだ? あなたが私にくれたもの/本山毬子 「依子の体って、ほんと黒子ひとつないんだね。きれい」 わたしたちの前にあるのは常に過去で、彼女の前にいるわたしは今のわたしではなかった。スポーツバッグを背負ったベリーショート姿でおどおどしている、情けない中学時代のわたしだけがそこにいる。 壁の中にいる/池野哉 住んでいたアパートを全焼させた高山は、逃避先の宿の砂壁の中に男性を見つける。彼は二階堂と名乗った。 この山間に想い咲く/橘つばさ 柳水亭に国民的俳優の篠崎右京が宿泊するということで、従業員たちは色めきだっていた。しかし、愛妻家で知られる彼が連れてきたのはずいぶんと歳の離れた女性で……。 ...and more!! 装幀 海野真夜中 写真 ヒロセミサキ 閑窓社 2019.11.24 発行 A6版/182ページ/カバーなし
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閑窓vol.1 翳りゆく部屋
¥700
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閑窓vol.1 「翳りゆく部屋」 平成元年に建てられ、平成31年になくなってしまうアパートの住人たちを書いた短編集です。14編を収録。 執筆者 ・池田拓矢 ・池野哉 ・市ヶ谷 ・熾野優 ・北枕ふか子 ・鮭とば子 ・瀬戸千歳 ・丸屋トンボ ジミー・マリファナ・ヤァマン/丸屋トンボ レゲエバーの「ヤァマン」で出会ったジミーに大麻の苗木を売ってもらった大崎と盛川。ふたりの秘密の同居生活がはじまる。 あなたのいない部屋/鮭とば子 田舎から上京してきたわたしのもとに“親友”が大きなボストンバッグを抱えてやってくる。朝方、彼女がベッドに潜り込んでくると、酒と煙草の臭いのする柔らかな曲線がわたしの背中に触れる。 春の手触り/市ヶ谷 震災から丸二年、私の大好きなあの子は、このアパートを出てゆく。 虚仮の花/池野哉 夏休みを利用して町の探検していた小学生のコウジ、ケン、アカネはひょんなことから大学生の「高山くん」の基地へ通うようになり……。 さよなら群青/瀬戸千歳 アパートの最後の住人だと聞かされた沙百合は不動産屋に「壁に落書きをしていいですか?」と尋ねる。美大受験を諦め、絵から離れて6年、沙百合は真っ白な壁紙の前に立ち尽くす。 ...and more!! 装幀 瀬戸千歳 写真 ヒロセミサキ 閑窓社 2019.04.30 初刷り発行 2020.10.17 2刷発行 2022.11.20 3刷発行 A6版/224ページ/カバーなし
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閑窓EX1 あの日、あの晴れた夏の日。
¥1,000
SOLD OUT
閑窓EX.1 あの日、 「あの日、あの晴れた夏の日。」 リオ五輪に沸く2016年、夏。 部活、幽霊、怪文書、進路相談、ふたりきりの夏祭り……枝浜南高等学校・附属中学校で起こる8月18日だけを切り取ったアンソロジー 。小説、短歌、写真、漫画、イラスト、脚本、なんでもありの16編。 『学窓の君へ』のスピンオフ冊子になります。 Lineup! 小説:市ヶ谷 小説:小沼理 小説:北枕ふか子 小説:君足巳足 小説:konore 小説:鮭とば子 小説:瀬戸千歳 小説:幅 観月 小説:まよい 小説:Raise 小説:渡辺銀次郎 漫画:橋本ライドン 短歌:橋爪志保 脚本:吉田フロイデ 装画:森田ぽも 写真・短歌:ヨノハル 編集・装幀・企画:瀬戸千歳 閑窓社 2021.05.16 初版1刷発行 B6変型版(128×170)/140ページ/数量限定:帯付き